舘祐司の気ままなブログ

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辞書編集に長い間携わり、先日「さらに悩ましい日本語」を出版された神永暁(かみながさとる)さんの記事が面白かったので、一部紹介したいと思います。
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まず例の森友学園問題で一気にメジャーになった言葉「忖度」、今年の流行語大賞の有力な候補ではないかとまで言われるようになっているそうです。

忖度は本来、「他人の心を推し量る」意味だけで、その上で「何かを配慮する」意味はないそうです。
籠池前理事長が国会の証人喚問の際に使ったことで一躍脚光を浴びることになりましたが実はそれ以前にも「政権に配慮する」意味で使われていたそうです。
籠池前理事長の場合は「斟酌」(しんしゃく)の方がふさわしいのではと書かれています。
ただこの言葉も元々は「酒を酌み交わす」という意味から「寛大な取り計らい」に拡大した歴史があるとのことです。
このように言葉は変化していきます。

国会会議録を研究すると興味深い使用例が見つかったそうです。
例えば「しっかり」です。「仕事や勉強などを熱心・着実に行うさま」を表す言葉ですが、最近の政治家がよく使っていることが分かったそうです。
小泉純一郎内閣時代からそれまでの3倍近くに増えたそうです。

次に「忸怩」(じくじ)です。本来は「自分の行いについて恥ずかしく思うさま」を言います。
ところが実際には「残念、もどかしい、腹立たしい」といった意味に使われていることがほとんどだそうです。
他人にいら立っているばかりで、自分は全然恥じていない、ということです。

読み間違いから言葉が変化することがあるそうです。
その原因として「音位転倒」ということがあります。
「音位転倒」とは例えば幼児が「とうもろこし」のことを「とうもころし」と言ったり「エレベーター」のことを「エべレーター」と言ったりすることです。
それで思い出すのが妻の母親が「シーチキン」を「チーシキン」、「タッパー」を「パッター」と言ってました。(笑)

この例として「だらしない」は「しだらない」の間違いから生まれ「しだらない」の「しだら」は「しどろもどろ」の「しどろ」と関係があり「秩序が乱れている」という意味だそうです。

「あたらしい」は「あらたし」の間違い。「さざんか」(山茶花)は「さんざか」を読み間違えたことから生まれた言葉です。山茶花は普通に読めば「さんさか」ですよね。

このように日本語は時代とともに変化していく言葉なのです。


言葉の変化と聞いて真っ先に思いつくのは「やばい」ですね。

ヤバいよ(出川さんのは本来の意味です)

悪いことが起こりそうな、具合の悪い時に使われる言葉だったんですが、最近では「美味しい、素晴らしい、かっこいい」といった意味で使われています。
肯定・否定問わず使える便利な言葉で若者を中心によく使われています。

どちらかと言えば悪いイメージの言葉が真逆のいい意味に変化してしまった言葉の代表格です。
若い人たちからすればおそらく悪いイメージなどまったくないと思います。

また気になる言葉としては、コンビニなどで1000円札を出すと「1000円からお預かりします」などと言われることが多いです。一体いつ頃からそういう言い方に変わったのでしょうか。
僕の認識では「1000円お預かりします」で問題ないと思います。

ほかの国はどうなんでしょう。聞いてみたいものですね。




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「このまま死んじゃってもいいかな、もう」とぼーっと考えている一雄だった。

38歳の一雄は会社をリストラにあい、妻はしょっちゅう朝帰りで離婚寸前、息子は中学受験に失敗してからというもの口も聞かず、家庭内暴力という事態になっていた。

家の中は散らかったまま、洗濯物も山のような状態だった。まさに家庭崩壊状態だ。

終電を降りて、駅前のベンチでウィスキーを飲んでいた時だ。
1台のオデッセイが停車し、「遅かったね、早く乗ってよ」 と声をかけられる。

中には橋本父子(おやこ) が乗っていたのだが、その親子は実は5年前に交通事故で亡くなっている。

妙な車に乗り合わせることになったのだが、 不思議に怖さはなかった。

そこから、奇妙なドライブが始まる。

一雄の父親はガンで危篤状態にあった。

一雄は中学生頃から父のことが大嫌いになり、今でも疎遠な状態にある。
なんでも自分のいう通りにしないと機嫌が悪い昔気質の父の事が大っ嫌いだったのだ。 

このドライブは不思議な事に、過去に戻れるのだ。
しかし、その時その場所はドライバーである橋本さんとその息子の健太くんだけが知っている。

そしてある時不意に一雄の父 、忠雄が現れる、しかも父の二十数年前つまりいまの一雄と同じ年齢の38歳の父親だ。
この目の前で起こっていることがよく飲み込めずにいると、「お父さんやら呼ばんでええ。ワシら、ここじゃ朋輩(ほうばい)じゃけん。五分と五分の付き合いじゃ。お前はカズで、わしは・・・・・そうじゃの、チュウさんでええわ」

それから、いろんな場面に遭遇する、そして妻のこと、息子の本当の気持ちが少しずつわかってくる。
父としてその気持ちを理解してやれなかったことを後悔する気持ちが膨らんでいく。

そしてまたあんなに嫌いだった父のことも誤解や思い込みがあり、思い違いがあったことに気がつく。 

これまでの自分の考えや行動が間違っていたことに気がつかされた一雄は、いま何ができるのか模索する。
しかし、どんなことをしても現実を変えることはできないということを思い知らされる。

自分は本当に死んでしまうのか、ならば残る息子と妻にはせめて幸せになってほしいと、必死でできる限りのことを思いつくまま行動する。



もちろん荒唐無稽なストーリーであることは誰の目から見ても明らかである。
しかし、不思議にこの物語に乗っかっていってしまう。


父親との関係、そして息子との関係性はどうなのか、またどうあるべきなのか。
誰もに共通する課題だろう。

時空を超えて物語が進行するというところはいささかSFチックではあるが、この物語は実にヒューマンドラマである。3組の父と子の関係性がいたるところに散りばめられている。

父と子の男同士のコミュニケーションはとても難しいということは、男性諸氏なら誰もが理解できることだろう。

読んでいてやはり自分自身のことを重ねて想像したりした。


実に面白かった。間違いなく秀作である。


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ある日大間木琢磨は変な夢を見た。

それは亡くなった父史郎が若かりし時、運送会社で働いていた頃の姿だった。

何故か、父とボンネットトラックに乗っている。「プレコンバーターを引け!」強い口調で父の声がした。
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時は昭和38年ごろ、父は運送会社の経理として奔走していた。

とてもリアルな夢だった、夢から覚めると母親が不思議そうに見ている。
それは父親の会社の制服を着たままの姿だったから。

琢磨は精神的な病を患い、会社は退職し、妻とも離婚していた。
いわばどん底の生活といっていいくらい苦しんでいた。

夢を見てから、父のことが頭から離れなくなった。

そしてその制服を着ると不思議なことにまた40年前の世界にタイムスリップする。
これは単なる夢でないことに気づくのだ。

その後、当時父が勤めていた会社が倒産したことを知る。
倒産の真実を知ろうと当時の銀行の担当者だった桜庭を突き止め、訪ねる。

話を聞いた桜庭は初めは半信半疑だったが、次第に琢磨に力を貸すようになっていく。

琢磨は父の過去を知ることに自分の時間の大半を費やすようになる。


すると壮絶な過去があったことがわかってくる。愛する人を抱えながら闇の人間との闘いが始まるのだ。

それは寡黙だった父からは想像もできないことだった。

やがて、タイムスリップのキーが、ボンネットトラックのBT'21号の鍵だとわかる。

このBT'21が物語の中心となって進んでいく。

途中からどんどんと物語に入り込んでいく、どうしようもなく続きが読みたくなってくる作品だ。


池井戸潤氏といえば、金融ミステリーというイメージが強い。

しかしこの作品はほとんどそれらとは一線を画するものだ。

過去と現在を行ったり来たりしながら物語が進んでいくという非常に面白いストーリーになっている。

40年の歳月を越え、一人の男の人間ドラマが描かれる。

名作「下町ロケット」「空飛ぶタイヤ」などに匹敵する力作だ。

昭和38年という時代の描写が僕にとって少し懐かしく思えた。
ボンネットトラックやバスが当時は普通に走っていたことも記憶がある。





些細なことだが、読み終わって一つだけ疑問が解消されないことがある。

それはこのタイトルの「BT'63」だ。
この物語の軸となって終始登場するボンネットトラックの名称は「BT'21」だ。
「BT'63」というワードはどこにも出てこない。

作品としては申し分ない内容で大満足しているのだが、このことだけが妙に残り、ちょっとだけもやもやしている。

アマゾンのレビューにも「なぜこのタイトルなのかわからない」と同じ意見があった。
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2019.11.25補足
「BT'63」については、Back To 1963ということのようだ。
つまり小説の中で40年前にさかのぼることが表現されているということのようである。
そして「BT'21」と書いたが、「BT21」の誤りで、こちらはボンネットトラックのBTという事らしい。
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アマゾンが公表している本の売れ筋ランキングベスト10の中でひときわ目立っている存在がある。

それは、この本だ。
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なぜ目立つのかというと、この本は児童向けのいわゆる児童書のカテゴリーだ。

売れ筋ベスト10に児童書がランキングされるのは非常に珍しいことなんだとか。

アマゾンの本紹介の部分をそのまま転用させていただくと以下のようにかかれている。
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思わずだれかに言いたくなる! 生き物のオモシロ情報が満載

---生き物の「ざんねん」な一面に光をあてた、はじめての本---

「紫外線をあびると光る」サソリや、「敵におそわれると死んだふりをする」オポッサムなど、
ふしぎな生き物を122種紹介。

【「ざんねんないきもの」 って、なに?】
ざんねんないきものとは
一生けんめいなのに、
どこかざんねんな
いきものたちのことである。

地球には、すごい能力をもつ生き物がたくさんいます。
でも一方で、思わず 「どうしてそうなった! ?」 とつっこみたくなる
「ざんねん」 な生き物も存在するのです。
この本では、進化の結果、なぜかちょっとざんねんな感じになってしまった
122種の生き物たちをご紹介します。

【どのページを読んでも、おもしろい! 】
くすっと笑えるものから、「へぇ~」 とためになるものまで。
どうぞ、お好みのページから読んでみてください。
子どもはもちろん、大人が読んでも楽しめます。

【情報たっぷりで、生き物にくわしくなれる! 】
すべてのページに入っている 「プロフィール」 欄を見れば
生息地、大きさ、とくちょうが、ひと目でわかります。

【進化のことが、楽しくわかる! 】
なぜ地球にはざんねんないきものが存在するのか……。
じつは、その理由は 「進化」 にあります。
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といった具合だ。

僕もまだ読んでいないが、この紹介文からもちょっとそそられる気がする。
もしかすると子供より大人の方がはまってしまうかもしれない。

ネット上に出ていた中身を少しだけ紹介する。
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今までスポットが当たっていなかった陰の部分をあえて紹介しているというところに興味を惹かれる。

あまり知られていないけどこの動物には実はこんなことがあるんだよ、などと言われたらちょっと耳を傾けてみたくなるのが人情ではないか。

少し視点を変えてみるとこういうことになるから面白い。
人が着目しないことに着目する。
賢い人は常にそういう考え方なんだろうと思う。

補足するとこの本の続編も発売されており同じくベスト10にランキング中だ。
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興味がわいた方はぜひ書店へ行ってみてはいかがかと。

にわか「動物博士」になれるかもしれない。

ただし「ざんねんな」が付くが。・・・


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今回の舞台は北海道にある極北市と雪美市である。(架空の都市)

財政破綻した極北市の市民病院の再建を図るべく院長として世良が抜擢される。
世良は大胆に人員削減や救急医療の委託を断行し病院の黒字化を目指した。
この病院何と院長の世良と副院長の今中の2名の医師で運営している。

従い救急患者を診る余裕などなく、隣の雪美市の救急医療センターに全て回すという手法だ。 

雪美市にあるが名は極北救急医療センターという。 
その救急医療センターにはあの「将軍(ジェネラル)」 速水医師が副センター長として勤めていた。

北海道という土地柄、雪に覆われた広大な土地を救急車が走っていては間に合わない。
従って「ドクターヘリ 」と呼ばれる救急医療専門のチームがいつでもヘリで患者を搬送するため待機しているのだ。と言っても天候不順や夜間は出動できない。2次災害のリスクが高まるからだ。
吹雪の時などは飛ぶことができない 、というようなこの地方ならではの特殊な地域医療の現実があった。

海堂氏はいつも小説を通して日本の医療の現実 に対して問題定義を投げかける。

今回は過疎地域や離島の地域医療の問題を取り上げている。

先ほどのドクターヘリだが、そこで患者が待っていることがわかっていて飛びたくても 飛べず、どうすることもできない、という歯がゆい状況になることもある。

そこを無理にフライトしてしまうと規律違反となり、2度とヘリに乗ることができなくなってしまうのだ。
またパイロットの人材不足という問題も抱えており一層過疎医療問題に拍車をかけている。

この本を読んでいたとき、ちょうど中日新聞にドクタージェットについて記事が載った。
医療過疎地から重症患者をジェット機で一気に都市部の病院に運ぶというものだ。
県営名古屋空港を拠点にしている中日本航空が請け負うということらしい。
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実はこの「極北ラプソディ」の中にもドクタージェット構想という下りが出てくる。
 2013年に発刊されているが、もうその頃からこの構想があったということなのだろう。

そういった現代の医療事情の世界をサラッと小説に織り込んでくるなども海堂小説の見どころなのだ。 

 

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