夏休みに友人4人でバイクツーリングを兼ねてキャンプに行こうということになった。

今から約40年前のことだ。

当時僕らは高校生で皆バイクに乗っていた。バイクといっても原付の50ccだ。
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(これと同じ形式で同じオレンジ色を当時所有していた)

「どこへ行こうか?」となって、「海がいいなあ」でも知多の海は行きたくないし、どうせなら日本海の海に行こう。と。すぐに敦賀方面の海に行くことになった。

当時、僕の父親が敦賀の美浜原発で仕事をしていた関係もありちょっとだけ地理に明るかったというのも背中を押した。

そして出発の日が来た。
天気は上々、快適に進んでいく。
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(イメージです)
たまにすれ違うバイクの人とは必ず左手で会釈のようなことをするのが当時は礼儀のようなものだった。
それがまた、妙に親近感がわき気持ちがいい。

5時間ほど運転していたと思うが、楽しくてまったく気にならなかった。
ようやく海岸の見える付近までたどり着き、さあどこでテントを張ろうかという算段になる。
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(イメージです)

キャンプ場ではないので、水が確保できたり、テントが張れる環境だったりといろいろ条件が必要になるのだ。
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(イメージです)

何とかよさそうな場所を見つけて、テントを張り、少し休憩をとって夕食の準備に取り掛かる。
飯盒炊爨をするつもりできたが、アウトドアにたけた人間はほぼいない。

ただ昔経験したことはあるよね…程度の浅い、うろ覚えな状態でやっている。
それでもえらいものでまあまあうまいことご飯を炊けた。これは奇跡的なことだ。
確かカレーライスをつくったような気がする。

何とか楽しく1日目を過ごすことができた。


そして一夜明け、状況は一変することになる。

「雨だ!」…正直なところあまり雨のことなど考えていなかった。うかつなことに4人ともそうらしい。

しかも結構な降り方だ。仕方なく急いでテントやそのほかのものを片付ける。

そして、バイクに乗りその場から撤退を余儀なくされた。

どこか雨宿りをするところがないか、探していると、偶然にも小さな小屋を発見した。
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(イメージです、実際はもっと古ぼけてみすぼらしい感じだった)

近づいて中の様子を見てみる、すると中はがらーんとしていて何もない。そして入口の扉にも鍵がかかってない。

なんというラッキー、ひとまず雨宿りもできるし、なんなら寝ることもできるぞ、と全員で喜んだ。

この前の北海道で助かった男の子もおそらくこんな気分だったに違いない。

建設会社が事務所で使っていたのか、何かわからなかったがとにかくありがたかった。
雨どころか風もしのげるしっかりした小屋だったからだ。

少し落ち着きを取り戻して、さあ、これからどうしようということになり、今日はここで一晩過ごして明日帰ろうか、などと話し穏やかなムードになった。

外は雨だし、何しようとなったとき、誰かが「怖い話しよう」となり、すぐに話はまとまった。…かに見えた。
3人は盛り上がったのだが、1人だけ急におとなしくなりしゃべらなくなってしまった奴がいた。

「どうした、どうした」「元気ないじゃん」

「黙ってないで、なんか言えよ」と言うと…「言いたくない」…何となくおびえたような顔に見える。

「なんでだよ」…「いいから言えって」………「じゃあ言おうか」

その彼がようやく重い口を開いて放った一言。

「この小屋の下に死体が埋まってたらどうする?」………沈黙。

この一言により全員が一瞬で凍り付いた。背中がゾーッとなり、身の毛もよだつとはこのことかと思うくらい衝撃が走った。

となるともうここにはいられない。「とにかくここから離れよう」と再びバイクに飛び乗る。

雨は降り続いている。どうやら、九州に台風が上陸しその影響で雨が降っているらしい。

どうする、雨がやみそうな気配はない、かといってテントで寝るのは無理だ。

そこで出した結論は「名古屋へ帰ることにしよう」だった。

そうして、逃げるようにそこから立ち去り、雨の中を延々また5時間ほど走って帰った。

行きの楽しさはどこかへ吹っ飛んでしまい、帰りは皆無言でひたすら早くうちに帰りたい一心だった。

今思うと、若さがなせる無謀な旅だが、旅はいろんなことを経験させてくれる。

その時は恐怖心で大変だったが、何年かするとそれも笑い話になるのだ。
だって、その時は考えられなかったが、死体が埋まっている確率などたぶん1%もないだろう。

でもあの時は「埋まっていたら」という言葉で全員そのようにイメージしてしまった。
あのタイミングであの言葉を言われたらもうどうしようもなかった。
なぜか一人も冷静に「そんなことあるはずないじゃん」と言える者がいなかったのだ。
そのような状況下になると人は大勢の意見に迎合していく心理状態になるのだろうか。

夏の日の雨で昔のそんな記憶がふと甦った。

ちょっと間抜けな高校生の珍道中の話である。