望月家の車、緑色のデミオが語り手となって物語は展開していくちょっと変わったストーリーだ。
通称緑デミ(みどデミ)と呼ばれている。

望月家は母親(郁子)おっとりした長男 (良夫)小学5年生の割に家族の中で1番大人びている次男(亨)家族の中ではちょっと浮いている長女(まどか)の4人家族である。

物語は、良夫と亨が車に乗っていた時に見知らぬ女が突然乗ってきたことからいろんな事件が始まる。


望月家の隣は細見家で、白のカローラGTが停まっている。

このカローラは通称「ザッパ」と呼ばれ、緑デミとは大の仲良しなのだ。
という具合に車同士でいろんな会話をしているのである。

すれ違いざまで、ファミレスの駐車場で、いろんなところで会話され次々に噂が広まっていくというわけだ。
急加速や急ブレーキ、急ハンドルなどには不平不満を言う。
車に感情を持たせているところがこの物語を面白くしている。
また、電車とは会話ができるのだが、何故か自転車やバイクとは会話が成立しない。 

車同士が会話する…僕は「機関車トーマス」を思い出した。

車たちは貨物列車のことを尊敬している。長い車両を引っ張って遠い距離を走るのがその理由らしい。


人間のことを車に例えた表現が楽しい。
例えば「ガルウィングドアの気分」と言ったら、人間で言うところの「お手上げ」だそうだ。

伊坂作品といえば、ウィットに富んだ会話が特長だ。

解説の津村さんも書いているが、良夫と亨の会話で、昔からSNSがあって記録が残ってたら面白いという流れで「今日、中臣鎌足さんと大化の改新の予定」という発想は面白い。

母親である郁子さんが自分の娘のちょっと頼りない彼氏について「あのね、サッカーのゴールキーパーなんて、みんな、ゴールを守るつもりでいるのよ。なのに、試合では何点も取られちゃうんだから。守ろうと思って、守れるんだったら世話ないんだから」…さすがである。

弟の亨が兄良夫の事を「名前の通りグッドマン」と指摘した。
まさにその通りのいわゆる「良い人」なのだ。実は良夫だけでなく望月家全員が善良な市民である。

その善良な市民が普通に暮らしていても、時に悪い人たちの渦に巻き込まれることもある。
 
最後のエピローグでは、ほのぼのとした暖かい望月家が描かれていて何かホッとした気分になった。
よかったね。緑デミくん。