陸上長距離界の名指導者、小出義雄さんが4月24日お亡くなりになられたと報道されました。
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言うまでもありませんが、シドニーオリンピック女子マラソンで金メダルの高橋尚子さん、バルセロナ、アトランタと連続でメダルに輝いた有森裕子さんなど無名選手からオリンピックのメダル選手まで育て上げた、素晴らしい指導者として彼の名を知らぬ人はいないくらいの方です。

独特の指導ぶりに一時は注目を浴びました。
とにかく走ることが大好きで、前の晩に大酒を飲み、翌日二日酔いでも走っていたそうです。
また、とにかく選手をいい気分にさせることが上手で、その選手ごとに練習メニューも変え、そして接し方も変えていたと聞きます。15人選手がいたら15の性格がある、その人にあった指導の仕方をするべきだ、というのが小出さん流だったそうです。
例えば、有森さんには「これやれっ」と言うと反発されケンカになるので、2段下がって「有森先生、有森先生」って呼んでたそうです。また、高橋さんは「これやれっ」っていうと素直に「はいはい」と来るんだそうです。
基本は褒めることだそうで、「足の遅い子でも『お前は本当にいい子だ、強くなるよ』と言ってりゃいいんです。とおっしゃっていました。
人間褒められて悪い気はしませんよね、性格にもよりますが、褒められて伸びる人、ダメになる人もいるでしょう、そのあたりの見極めが重要になってきます。
小出さん本人も小学校、中学校時代に先生から「義雄は凄いな、将来は箱根駅伝に出ろ、いやオリンピックだ」などと褒められて、よーしとやる気が増したそうです。先生や学校というのは生きる力を教える場所なんだと言います。
小出さんは家が貧乏で大学に行くことができず、自分で金をため22歳になってから順天堂大学に入学し、1年から3年まで箱根駅伝に出場されたそうです。その後地元の市立船橋高校の教諭を務め、高校駅伝でチームを優勝に導きます。その功績が認められ実業団のリクルートの陸上部監督に就任し、有森選手らを輩出しました。

訃報を聞いた有森さんがインタビューで小出さんの思い出話を語っておられました。
その中で印象に残ったことが、小出さんの指導で心に残っていることはという質問に対し「なんで?と思うな。せっかくと思え」という言葉です。
~「私、故障ばかりで。故障すると『有森、なんで?と思うな。せっかく、と思え』と。意味のないことなんて、なにもないんだと。どんなことが起きても『せっかく』と思えたから、どれだけ故障しても立ち向かえた。ちゃんと向き合ってくれたことに感謝しかありません」~
アスリートが一番恐れることは故障やケガです。故障すると気分は最悪に落ち込むんじゃないでしょうか。そんな時にこの一言で気持ちがすっと楽になり、よしまた頑張ろうってなるんだと思います。

この「意味のないことなんて、何もないんだ」という言葉は凄く勇気づけられますね。
「悪いこともいいこともすべてのことには、意味がある。」そう言われれば、くじけずに頑張ろうという気になります。

小出さんは、平成の時代を一生懸命駆け抜けたんだと思います。そして今、平成の終わりとともに、小出さんの生涯も終わりました。
もう、今頃天国でかけっこしていらっしゃるかもしれませんね。