新設される東城大学エーアイ・センターのセンター長にひょんなことから抜擢された、田口公平であった。

田口先生は通称グチ外来と呼ばれる、不定愁訴外来の主任であり、東城大学附属病院のリスクマネジメント委員長という肩書も持つ。

最新の縦形MRI「コロンブス・エッグ」でこの機械の技術者が謎の死を遂げることから物語は始まる。

その後同じ場所で今度は元警察庁の局長がまた不可解な死に方で発見される。
そしてこの病院の院長である高階がその容疑者として身柄を確保された。

予想外の展開に慌てたのは田口や島津ら病院関係者だ。「病院長が殺人を犯すはずがない」

そこで登場するのが、田口の天敵ともいえる、厚生労働省技官の白鳥圭輔だ。
相変わらず舌鋒鋭く一部の者には煙たがられるが、頭の回転は速く、目の付け所が普通ではない。

田口は振り回されるが、的確に仕事を進めていく姿に感心する。
嫌な奴だが、どこか憎めないところがあって結局のところ協力して事件の解決に立ち向かっている。

今回は殺人トリックの謎解きという要素も含み、いつもの海堂ミステリーに重厚さを増している。

医療器具の専門性にはいつものことながら素晴らしく、犯罪による異常死の解剖率が低いという社会問題もテーマとして描かれている。
解剖をしなければ正確に死因を特定することが難しいと言われているのだが、我が国の異常死の解剖率はわずか1割ほどだという。
そのような現状を踏まえ、医療界ではオートプシー・イメージング(略してA・I)の導入を勧めようとしているのだが、警察がそれに難色を示しているという。
A・I(エーアイ)とは体を傷つけることなくCTによる断層撮影を行う機器で、体を輪切りにしたような画像は、死因の特定に非常に有効だと言われる。

大きなテーマの裏側で司法と医療界の綱引きがうごめいているという図式の元、このストーリーが成り立っている。
そのあたりの切り込みも海堂ミステリーのだいご味と言える。

また、この本の前に書かれている「イノセント・ゲリラの祝祭」も解剖派の病理医師とエーアイ推進派のせめぎあいが描かれストーリーも登場人物も一部つながっており、合わせて読まれるとさらに面白い。