昨日豪雨のため、東海道新幹線が静岡ー浜松間で運転を停止したとのニュースがあった。

新幹線は非常に優秀な乗り物で地震以外で停止することはほとんど記憶にない。
雨で止まったというのだから相当な雨量だったのかと想像する。


そのニュースを聞いて東海豪雨の時のことを思い出した。

2000年9月11日のことだ。

東京で仕事を終え、東京駅を18時頃出発した。
静岡辺りまで来たとき徐行運転になり、「前方の列車と車間距離を保つため徐行運転します」とアナウンスが入った。

そしてしばらくすると、完全に停止する。前を行く列車が止まったからである。
どうやら名古屋駅で大雨のためトラブルが発生しているという情報だった。

この時、名古屋地区が大雨で各所が冠水していることはまったく知らない。

停まったのはいいが、ちょうどカーブのところで斜めになったままだった。どうにかもう少し動いてくれないかと思った。

そしてしばらく停止したのち、少し動き出しやっと平坦なところまできた。

この時はまだ「仕方ない、今日中に名古屋に着けばいいや」ぐらいの気持ちだった。

しかし待てど暮らせど新幹線は動かなかった。

こうなると、食事の問題が出てくる、たまたま車内販売でお弁当を購入していたのでとりあえず助かった。

そのうち、車内のトイレの一つに「使用禁止」の張り紙が付いた。

とうとう一晩そこで過ごすこととなる。
その列車は非常に席が空いていて3人席で横になって仮眠することができた、不幸中の幸いというやつだ。
僕は男性だから平気で寝ることができたが、女性の方々はおちおち眠れなかったかもしれない。

朝になってJRからおにぎりとお茶の差し入れがあった。
その後動き出し、確か浜松の駅に横付けした。
お昼近くになりおなかをすかしていた乗客らはホームにお弁当があるのではと期待していたが、ホームには何も用意されていなかった。

僕の乗っている列車の後続の車両が真横に停車したので、そちらの車両をふとのぞいてみると
ほぼ満員状態だった。おそらく横になって寝ることはできず大変だっただろうと想像する。

その後続列車は直接ホームに出れないので我々の乗っている車両にはしごをかけてホームに出れるようにした。
その人たちもホームに食べるものがあるのではと期待したに違いない。しかし何もないことに落胆していた。
tokaigouu-05(ネットから拾ったその日の写真)

こういう状況がわかっているのだからJRには何とかしてほしかった。

「一度列車を乗り換えてください」というアナウンスが入ったがすぐに「間違いでした戻ってください」というようなことでドタバタが続く、おなかもすいてくるので余計にイライラが募ってくる。

いつ発車するかわからない状態なので、列車の外に行きたいがなかなか行くこともできない。

そして僕はついに意を決して、ホームに出た。ホームの弁当屋さんは人の影もなく閑散としている。
急いでホームの階段を下り、改札口の近くまで来た。そしてその向こうの光景を見て絶句した。
なんとお弁当屋さんにはお弁当が山積み状態であるのだ。

駅員さんに弁当を買いたいので出してくださいと断り、浜松だからと「うなぎ弁当」を購入したことをよく覚えている。
そしてすぐに列車に戻り、食べていると周りの視線が気になった。そりゃそうだ、皆腹を空かせているに決まっている。一人で食べていることにはとても気が引けたが仕方がなかった。

僕は下に降り改札の外まで行けば山のようにあることを皆さんに教えた。
どれくらいの人がそこまで行く勇気を出せたかはわからない。
距離にして100mかそこらなのだが、この状況でそこまで行くにはとても勇気がいるのだ。

この時は本当にJRの不親切さに腹が立った。困っている人たちがいることがわかっているのだから、用意してあげるだけのことなのだ。別にタダでくれと言っているのではない、皆さんお金を払って買うと思う。

こういう災害時には水と食料の大切さが身に染みてわかった気がした。
食料に関して言えば、僕は幸運だったと思う。


その後、ようやく動き出し、名古屋に戻ってきた。
車窓から外を見て唖然とした。景色が一変していたのだ。
toukaigouu0421

いたるところが冠水し大きな水たまりというより池ができていた。そして車は何台も水没状態。

車内ではテレビもラジオもない、当時は今のようにインターネットを簡単に使える環境ではなかったのでほとんど情報らしい情報はなかったのだ。

後で聞いたのだが、名古屋駅までなんとか来たが電車が止まっていて、駅で一晩過ごしたという社員もいたそうだ。


名古屋駅のホームに降り、改札口に来るとやっと帰ってきたという懐かしみのような感情がわいた。
たった一晩のことだがとても長く感じ、疲労感もたっぷりあった。
22時間以上という新幹線開業以来最大の遅延となったそうだ。
改札口の当たりでは人がごった返していた、払い戻しの手続きか何かだろう。

僕は急いでタクシーに乗り、事務所に向かった。
この日は朝から月に1度の会議の日だったからだ。


多分もう2度とないだろう、新幹線の車中泊という経験は。