医療ミステリーの大家、海堂尊氏の著書としては珍しく医療現場は一切出てこない。
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医学部大学生たちの剣道に青春をかけたストーリーである。

しかし、そこは海堂尊ワールドが展開されている、海堂尊ファンならお馴染みのキャラクターたちが登場する。

のちに、「ジーン・ワルツ」 で産婦人科の名医として登場する清川吾郎や「ジェネラル・ルージュ」の異名を持つ救急外科医のスペシャリスト速水晃一がそれぞれの大学の優勝旗をかけて戦う。

他にも、後に東城大学付属病院医院長となる高階が剣道部の顧問として、重要な役で登場している。
また「ナイチンゲールの沈黙」で大活躍の愚痴外来、田口医師もわずかではあるが顔を覗かせている。

海堂尊ワールドの主要なキャラクターたちの若かりし頃の1ページを見ることができた。
また、高階顧問の医師の卵たちに放った言葉も、とても重みがあり厳しさを教えるもので興味深い。

著者が大学時代に実際に剣道に打ち込んでいたというから、ある意味自伝的な要素が強いのかもしれない。

それにしても、若かりし頃の清川と速水を剣道で対決させるとはなんとも粋な計らいである。

清川吾郎の弟「志郎」や女性剣士の 「ひかり」などが絡み合い、最後まで楽しく読むことができた。

剣道の一瞬の間合いが奥深く表現されており非常に面白い。