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「解離性同一障害」という心の病を題材に書かれた小説です。

「解離性同一障害」とはどんな病気なのでしょうか、…一言で言えば、多重人格を持つ人もその一つです。

1980年代にアメリカで発生し、その後、雨後の筍のごとく急に増加したそうです。
心の病なので、ウィルスなどは存在していません。ではなぜ急に激増したのでしょうか。

例えば日本では「狐憑き」西洋では「悪魔憑き」というようなことが昔からあります。
ただそれは、多重人格ではなく広義のヒステリーと考えられているそうです。
精神医学的なヒステリーというのは、身体的には全く問題がないのに体が動かなくなったり、目が見えなくなったり病気にそっくりな症状が出たりするそうです。

鬱病などもそういった部類の精神的な病です。

つまり、人間の非常にデリケートな部分のことで、はたして病気なのか、単なる思い込みなのか、あるいは芝居がかっているのか、その判別がとても難しいことから、「その症状はこれです」といった明快な診断が出せなかったのだと思います。


実は「解離性同一障害」の原因と考えられている中に「児童虐待」の問題があります。
幼い子供が親から虐待を受けた時、どこにも逃げ場はありません。その結果、本来の自己を捨てて他の人格に逃げてしまうということが起こる場合があると考えられています。
ある程度の年齢になれば、どこかへ逃避行するとか、誰かに相談するというような他の選択が出てくるのでしょうが、幼き子供にはほとんど選択の余地がありません。

例えば、本来の人格がA、新しい人格がBとします。AがB人格になっている間の記憶は残ってないそうです。

大抵この病気を持つ人の場合十数人の人格を持つことが多いそうです。辛いことがあればあるほど別人格が増加していく傾向があるようです。そして年齢や性別も関係なく色々な人格が現れるといいます。

すべては本来のAから生まれてきているものと考えられており、治療はその多重人格を一つに統合することを目指します。カウンセリングや催眠療法などを用いて行うそうですが、そのあたりの詳しいことはこの本の中でうまく解説されています。

ある時、見ず知らずの人から友達のように話しかけられたり、覚えのない借金の取り立てがあったりしたら、どう思いますか?…訳が分からず何処かに逃げたくなりませんか?
周りの人からは頭がおかしいと色眼鏡で見られ、友人はなくなり、外出するのも気が引けてくるでしょう。自分に置き換えて考えるとゾッとします。そんな恐ろしい病気なのです。

しかし、考えてみると我々も普段は理性で自己をコントロールしています。
通常は表の部分しか見ることはできません。
内面はその本人のみが知るところです。どんな人も表と裏の部分があるとすれば、多重人格という要素を持っていると言えます。ただその裏の人格に支配されるところの手前で本来の人格がコントロールしているのかもしれません。この「プリズム」を読むとそんな風に思えてきます。

そう考えると案外身近なところにある病気なのかもしれません。

小説は、主人公である「梅田聡子」が家庭教師の仕事先で、1人の男と知り合います。そしてその男が「解離性同一障害」だということを知ります。少しずつ興味を持ち、会って話しているうちになんと、その男の裏人格の1人と恋に落ちてしまうというストーリーです。

裏人格ですから、実在はしていません。Aの体を借りているBという存在です。
一見ありえない話に思えますが、もしかすると現実的にあり得る話のようにも思えてくるから不思議です。
さあ、どんな結末が待っているのでしょうか。



人間の心の内面のデリケートなところを中心に展開し、ちょっと奇妙で不思議な世界でしたが、とても面白く読むことができました。



地球上理性を持ちたる唯一の我が人類は複雑怪奇